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2009年02月05日

◆小説「新・人間革命」潮流10(画付)

◆小説「新・人間革命」
2月5日[潮流10]
 山本伸一はコントロールセンターから、ワイキキの浜辺に案内された。
 浜辺から、数十メートルほどの海上に、火山をかたどった人工の島が浮かんでいた。その上で、何人もの人が作業に励んでいた。
 伸一を案内していた、アメリカの理事長が説明した。
 
 「あの浮島が今回のコンベンションのステージです。浜辺全体が観客席になります。舞台の横幅は三十メートル、奥行きは四十五メートル、高さが二十一メートルあります。
 全体を火山の形にして、噴火もさせるようにしています。また、舞台の上には、大スクリーンを取り付けます」
 浮島は、ステージ部分と、後方の機械コントロール部分からなり、後方には各種の機器設備や発電機、出演者の更衣室や飲料水タンク、トイレなども設置されているという。
 確かに大がかりで、斬新な計画だが、作業に従事するスタッフの労力も、大変なものがあったにちがいない。伸一は、それが心配でならなかった。
 
 「これは、誰のアイデアですか」
 伸一が尋ねると、理事長は、誇らしげに胸を張って答えた。
 
 「私です。アメリカ人は、こうしたことが大好きなんです」
 
 伸一が口を開いた。
 「みんなに相当な負担がかかっていると思うが、本当に問題はないのかい。
 毎年のことなんだから、派手で奇抜な、大がかりな舞台をめざすのではなく、内容面での充実に力を注ぐ努力をすることです。
 メンバーは純粋です。皆、献身的に準備にあたってくれる。しかし、それを当然のことのように考え、過重な負担を強いるようなことが続けば、どこかで、その弊害が生じるものだ。事故も起こりかねない。
 
 『一将功成りて万骨枯る』ような事態は、絶対に避けることだ。守るべきはメンバーだ」
 
 こう語る伸一の口調は厳しかった。得意げであった理事長の顔色が変わった。

 
【聖教新聞】



 
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