◆小説「新・人間革命」[学光5]
◆小説「新・人間革命」
2月1日
[学光5]
山本伸一は、通信教育が、いかに困難な道のりであるかを、よく知っていた。したがって、その初心を貫くためのアドバイスも忘れなかった。
「皆さんの大きな励ましとなり、力となるのが、同じ志をいだく友人との交流であります。相互に連携をはかり、切磋琢磨していっていただきたい。
大学で学ぶ意味の一つは、人生の友を得ることであります。互いに啓発し合える友の存在は、何にも増して貴い財産であります」
敢然と一人立って、苦難の壁に立ち向かう覚悟なくしては、何事も成就はできない。そして、その決意を、さらに堅固なものにしていくのが、友の存在である。
アメリカの大思想家エマソンは言う。
「友人と共にあるとき、私たちは容易に偉大な人間になれる」(注)
最後に伸一は、未来を託す思いで、力を込めて語った。
「第一期生の皆さんこそ、通信教育部の創立者であります。それを忘れないでいただきたい。開拓の道は険しくも、その向学の軌跡は、創価大学の名とともに、永遠に顕彰されていくことでありましょう。
皆さん方のご健康とご健闘を祈るとともに、建設の学徒の未来に栄光あれ、と申し上げ、私のあいさつとさせていただきます」
開学式に集った通教生から、一斉に、決意のこもった大拍手がわき起こった。
四百字詰め原稿用紙にして、八枚ほどの長文のメッセージである。伸一は、この原稿には、何度も、何度も、手を入れた。
彼は、開学式に出席し、一人ひとりの学生を抱きかかえるように祝福し、励まそうと思っていた。しかし、それが、困難となったために、せめて、永遠の原点となる指針を贈りたかったのである。
参加者は、伸一の深い真心と、余りにも大きな期待を感じながら、身震いする思いでメッセージのテープを聴いた。この時、通教生の心田に、誓いの種子が植えられたのだ。
【聖教新聞】転載
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